30歳で真打昇進
若き落語家が打ち明ける、落語の不思議と可能性

ずっと聴いていたくなる深みのある声が、小気味よいリズムに乗って笑いを運んでくる。
この声の持ち主は、
若き落語家 3代目柳亭小痴楽さん。
使いこまれた着物用の眼鏡と、NUDE SILVERの無垢なカラーが美しいハーモニーを奏でていた。
高座のホープが打ち明ける、
落語の不思議と可能性。

柳亭 小痴楽_1
柳亭 小痴楽_1

―お洒落な印象のある小痴楽さん。エイジングして味のでるジュエリーがお似合いでした。

ジュエリーも、エイジングという言葉を使うんですね。
昔は漫画に憧れて(笑)ピアスを選んでいましたが、今は高座に上がるときを考え控えるようになったので新鮮でした。
垢がついて磨いてを繰り返して、こなれていく。着道楽だった親父の影響で好きになった、着物とよく似ています。
受け継いだものや一生懸命お金を貯めて買った着物は、元がいいし、思い入れもあるから自然と大切にする。シーズンが終わったら着物の糸を全部ほどいて、丸洗いしてもらいます。
メンテナンスにお金や手間がかかりますが、パリパリだったものがこなれてくるのも楽しい。毎日「あれがある」と気に掛けることが、愛着や丁寧さにつながっていると思います。

柳亭 小痴楽_2
柳亭 小痴楽_2

―愛着を持って育てられたものには、やがて個性が生まれます。古典落語をされるなかで、個性をどのように捉えますか?

個性とは、滲み出てくるもの。落語では「フラ」と呼ぶんですよ。一門によって様々ですが、個性を否定しない考え方が、この世界にある。
例えば「こんにちは」を「んちはぁ」と自然に言ってしまったり、昭和の大名人、古今亭志ん朝師匠が挟む「んン」といった音だったり。
でも個性に頼りすぎて、「あいつはフラがあるね」なんて言われて鵜呑みにしちゃうと成長しない。
行けば行くほど、年齢があがればあがるほど努力が必要なのもこの世界。
ずーっと昔から同じ演目をやっているのにお客さんが飽きずに来てくれるのも、先輩がお小言をくれるのも、後輩が褒めてくれるのも、努力次第。
きっとジュエリーも、何もしないで所有しているだけと大切に磨いていくのでは、結果が全然違うんじゃないかな。

柳亭 小痴楽_3
柳亭 小痴楽_3

―ご自身の年齢とはどう向き合っていますか? 時間の作用とは何でしょうか?

落語の世界では、「年齢をへて成熟する」ことがすごく大きいと思います。
落語ってだらしない人物が多く出てくる、談志師匠が言っていたように人間の「業の肯定」なんですよね。わがままだったり、ズルい人間がいたっていいじゃないかという考え方。
自分の人生や考えがキャラクターに反映されて個性に磨きがかかるので、自分に飽きないでいられます。「はっつぁん」というキャラクターにしても、16歳と今の僕では違うものになりますから。
また落語家は、歳をとるごとに気の抜き方が分かってくる。毛の抜け方もすごいですけど(笑)。
昔は吐いていた台詞がこぼれてくるように聞こえてきたり、漫談ではなく思い出話を楽屋でしているだけなのに、「落語」になる人もいるんですよ。

柳亭 小痴楽_4
柳亭 小痴楽_4

―真打昇進後、新型コロナ禍でもYouTubeをはじめ新しい試みを多く発表されていますね。これから目指すことは?

真打になって一段落といったことは全くなく、やっと一人前で今も「ここから本番」という気分です。
もっと落語を聴きにきてほしいから、聴きにきてくれる人たちを考えたい。
例えば寄席の時間にしても、「約4時間半ずつの昼夜公演で何回でも出入り可能」は昭和やその昔ではお得かもしれないけど、これだけスマホで多様なエンターテイメントに触れられる現代にそれでいいのか。
友近さんなど異業種の方が講談に敬意を払いながらネタにしてくれているのに、お客さんが来ないのは落語ではなく、落語家がつまらないせい。
変革できる実力や立場が持てるように、稽古を重ねるのはもちろん、後輩にも「この人には敵わない」という姿を見せたいと思っています。
落語は、もっと人気になるにふさわしい、とても面白いものだと思っていますから。

柳亭 小痴楽_5
柳亭 小痴楽_5

着用アイテム

プロフィール


3代目柳亭小痴楽/落語家

1988年生まれ。5代目柳亭痴楽を父に持ち、16歳で入門。2019年、30歳のとき真打昇進。古典落語と向き合いつつ、若手落語家や講談師で結成したユニット「成金」の活動や、新型コロナ禍で「前座応援会」を企画するなど、落語会の次の世代を盛り上げる活動でも知られている。

衣装:Call/KAIKO/川

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