経年美化の
体現者たち
経年とともに変化する“ありのまま”を愛し、
体現している方の世界観をご紹介する、
「経年美化の体現者たち」
日本最大級のヴィンテージ総合プラットフォーム『VCM(Vintage Collection Mall)』の運営、
渋谷PARCOにマーケット型リアルショップ『VCM MARKET BOOTH』、
さらに日本最大級のヴィンテージの祭典『VCM VINTAGE MARKET』を開催するなど、
ヴィンテージを通じて経年美化を体現する十倍直昭氏。その職業観やシルバージュエリーのスタイリング、経年美化を楽しむ極意を伺いました。
ジュエリー、家具、古着など
ヴィンテージの共通する面白さ、
楽しむポイントは?
シルバーはもちろん、デニム、レザーなど経年変化していくところ、そして今では使用できないような素材が使われているところが心惹かれるポイントです。例えば、リーバイスのデニムはその年代でしか染められない染料を使っ ていたりします。今だったら環境問題で使えない染料を使用していたり。
60年代以前のデニム特有の黒ずんだようなインディゴ、新しい時代になるにつれて縦落ちと言われる独特な色落ちが少なくなっていく青みのあるインディゴ...年代によって色味が全然違う。ダイレクトにその時代を楽しめる、唯一のもの。その時代を身に纏えるという文化そのものがロマンであり、ヴィンテージの面白さです。
十倍さんならではの
L.A.H.の楽しみ方を教えてください。
L.A.H.はロジウムコーティングをしていないからこそ生まれるシルバー表面の変化を楽しみ、自身で育てていく、経年するほど楽しめるのがいいですよね。最近の古着も、1990年代、2000年代のものも価値を見出されているんです。古ければいい、というわけではなく、その時期だけ、その瞬間だけ作っていたものが価値になっていく。
イベントの関係者だけに配られたスタッフTシャツのように、その日にしか使用されなかったものや数量限定で製造しているもの、ペンキの汚れが飛んだ雰囲気のTシャツが100万円以上で売れる物もある時代。価値の捉え方も多様化してるんですよね。
L.A.H.のジュエリーも、限定的なアイテムだったり、経年変化を愛でることだったり、そういった“唯一のもの”として価値を見出していくともっともっと楽しいですよね。ヴィンテージジュエリーとは違い、L.A.H.はお手入れの仕方ではキラッとした輝きに戻せることも魅力だと思います。
ファッションにシルバージュエリー
を取り入れるコツや
こだわりを教えてください。
普段からシルバージュエリーをよく愛用しています。今日もリング、キーチェーン、ブレスレットなどは全てシルバーで統一。僕にとってのジュエリーを選ぶポイントは “毎日つけられること”。場所によって特に着け変えることはしません。そのくらい自分に馴染む物を選んでいます。
最初の白い輝きが、着けていくうちに馴染んでいくのがシルバーの特徴。特にヴィンテージフリークはシルバー好きな方が多いと思います。インディアンジュエリーやメキシカンジュエリーはそもそものロジウムコーティングしていないものや既に剥がれてしまっているものも多いので、ロジウムコーティングしていないまろやかな輝きを持っている L.A.H.のシルバージュエリーはヴィンテージファッションにも取り入れやすいと思います。
コーディネートには正解がないので、トータルバランスが重要だと考えます。あの人の雰囲気だから似合っているな、って思われたら正解だと僕は思います。例えば同じ年代のヴィンテージを全身で身にまとう事も悪くはないと思いますが、ヴィンテージアイテムと、現代のブランドをミックスするのが今を生きているからこそできるおしゃれ。ジュエリーはその外しのポイントとして取り入れやすいですよね。
L.A.H.は“ヌードシルバー”=「ありのままの自分が主役」というメッセージを込めています。十倍さんにとって、
「ありのまま」でいれる場所、
空間、時間などはありますか。
ヴィンテージに関することは、仕事でやっている意識はないんです。ヴィンテージの世界は、時代と国を知らないといけないのと、映画と音楽とも密接なのでインプットすることが本当に多い。本当に好きすぎて人生が足りないくらい!“ありのままの自分”はヴィンテージに触れている時と、その勉強している時ですね。
For Me
L.A.H.を自身でコーディネートし
着用するとしたら
どのアイテムを選びますか?
この大ぶりなブレスレットですね。シンプルなデザインの中にトグルが付いているのがポイントになっていてお気に入りです。これは日常的にどの場面でも、どのコーディネートにも合う。腕のサイズに合わせてオーダーできるのでフィットする感じもいいですね。
シルバージュエリーが映える90sのブラックのゴッホのアートT シャツ&同じく90sラルフローレンのキューバシャツ、そして60sリーバイス 501 BIG Eのデニムに合わせてみました。カジュアルなヴィンテージアイテムを綺麗めに着こなすのが好きなんです。シルバージュエリーが入るとさらにワンランク上の、タイムレスな着こなしができるのがいいですよね。
Pick Up
経年美化アイテム
マルセルブロイヤーのデスクランプ
1925年パリで開催された「近代工業装飾芸術国際展」時に作られたバウハウスを代表する名品。真鍮にシルバーのニッケル塗料を施しているもの。そのニッケルが剥がれ、シルバーともゴールドとも言えない品を感じる色味に変化。当時のデザインそのままに、色味が変化していく楽しさはまさに経年美化の真骨頂。
リーバイス 507XX
オリジナルデニムジャケット セカンド
1952 年に登場したこのタイプは、短めの着丈でボックスシルエット、下めに付いた2つのフロントポケット、フロントプリーツが特徴。このセカンドタイプは古い年代のリーバイス・ヴィンテージジャケットの名作です。この時代特有なザラっとした生地と、深みのあるインディゴが経年変化した今。時を超えて出会える体験がたまらない。
チャンピオンのパーカー
スウェットの弱点である縦縮みを防ぐ為に作られた名作、キングオブスウェット、リバースウィーブ。元は濃いネイビーだったものが経年や焼けで色褪せて淡い均等なパープルに。“DOVER高校レスリング部6番”という意味のプリントもとても良いデザイン。
L.L.Beanトートバッグ
差し色使いが可愛い、グリーン×ネイビーのトートバッグも、色褪せて優しく変色。新品だと固い生地も手に馴染む程度に柔らかくなっていき、“自分のもの”としてさらに愛着が増していく。
最後にあなたにとって
「経年美化」とは何ですか?
生きた証ですかね。
普段からジュエリーを着け忘れたら取りに戻るくらい大切にしています。日常的に着けているとぶつけたり落としたり、傷ついていく。自分もそうやって目に見えない経年変化をしていくんだなって。人ってとんでもなく傷つきながら生きていくじゃないですか。歳を取ることはネガティブではなく、人としての深みが増していく。そういう意味ではジュエリーも綺麗な状態よりも、だんだん傷ついたり黒ずんでいったり…そんな思い出が刻まれていく、共に生きてきた証が経年美化だと思います。
PROFILE
『VCM』(Vintage Collection Mall)代表
2008年 Vintage Select Shop「Grimoire」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム"VCM (Vintage Collection Mall)" を立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型リアルショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペースとして「VCM GALLEY」を運営している。
"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野でクリエイティブに活動し、ヴィンテージショップとヴィンテージラバーを繋げる場の提供や情報発信を行う。