行き場のない痛みと苦悩を抱えた青年を繊細に演じたかと思えば、 バラエティ番組では自然とこちらまで笑顔になるリアクションで惹きつける……。 俳優、高杉真宙さんのころころと変わる表情に、釘付けになっている人も多いはず。 じっくり質問の意味を考えながら、真摯に、そして朗らかに インタビューと向き合ってくれた彼の魅力に後編でも迫ります!
葛藤の先にしか、出会えない景色がある
―――現在高杉さんがご出演されているのは、いわゆる「月9」ドラマである『PICU 小児集中治療室』(以下『PICU』)。物語が進むにつれ、「医者」という命と向き合う職業のさまざまな側面が伝わってくるように思います。実際に矢野悠太役を演じてみて、考え方に変化はありましたか?
「そうですね。僕、もともと健康体で病院にはワクチンを打ちに行くくらいでして……。あまり関わりを持つことがなかったので、想像することしかできなかったんです。でもつらいことや大変な部分は、実際にお話しを伺うと想像以上でした。やっぱり、人を救うことができる職業って、大変で過酷なんだと思います。それは、医者だけではなく弁護士などもそうだと思いますが、どこかで人として割り切りをしないといけないから。割り切りをしないと、きっとその人の心が死んでいってしまう。ある意味、自分を騙さないといけない時もあると思うんです。ただ医者も人間なのでそう上手くはいかなくて、自分自身との向き合い方でさえ迷ってしまう」
―――例えばドラマでは、肺を損傷した男の子の肺を温存するか、全摘出するかの判断を迫られるシーンもありましたね。
「はい。特に『PICU』が、未来ある子どもに対する医療をテーマにしているところも大きいと思います。第一優先はその子を生かすこと。でもその後に、もしかしたら起こるかもしれないパターンを排除するか排除しないかの選択は、難しいですよね。その子のためだったら本当は全部救ってあげたいけれど、でもそうすることでその子の将来は危うくなってしまうかもしれない」
―――確かに『PICU』を拝見していると、人の命を左右する職業だからこそ「どこに落としどころをもっていくのか」という判断の難しさが伝わってきます。
「しこちゃん先生(吉沢亮さん演じる主役の志子田武四郎)や(高杉さん演じる)悠太はまだ若くて知識も経験もないから、より割り切ることは難しいと思います。でもその葛藤もありながら、どう成長していくのかが楽しみでもありますよね。シリアスな場面も多いけれど、ずっとシリアスにしていても大変なので現場のムードは明るいんですよ(笑)」
―――演じていらっしゃる悠太を含めた、幼馴染4人のやり取りにも笑わせてもらっています。
「僕も母親の学生時代の友人の子どもを小さい頃から知っていて、同い年なので割と一緒に遊んだりしていたんですけど、ちょいちょい連絡が来るんです。常に連絡を取り合うとかではないのですが、しこちゃん先生と悠太のように、何かあればちゃんとヘルプできる関係性ではあると思っていて。必要なときに寄り添ってもらいたい存在がいるというのは、大切なことですよね」
小さな気づきが重なり、大きな変化が生まれて
―――連続ドラマや映画、舞台といった演技のお仕事から、よりプライベートな高杉さんを見ることができるバラエティ番組まで、本当にさまざまな場で引っ張りだこですね。ジャンルによる違いは感じていらっしゃいますか?
「やっぱり舞台は全然違いますね。面白いです! ダイレクトにお客さんたちの反応が伝わることって他にないので、やっぱり舞台は面白い。なんで皆やらないんだろうと思うくらいに(笑)。「目の前の観客から反応があるって怖くないの?」と聞かれますが、そこも含めて好きですね。2カ月近くも毎日同じことを言って、同じ動きをしているんですけど、ずっとやっていると言葉も、話や感情の流れも少しずつ変わっていくんですよ。本番を1ヵ月以上やっていても、「これはこういうことだったんだ」って新しい発見が見えたり」
―――発見を通して自分を更新していくことは、変化を恐れないということでもありますよね。特に高杉さんのように人前に出るお仕事で、そうできること自体が勇気のいることだと思います。
「全部たまたまですけどね(笑)。本当に、なんとなく進んでいってそう気づいたというか。でも「こうなんだろうな」と思っていたことでも、変わる瞬間というのははっきりあったかな。自分自身で気づかないと、人にいくら言われても変われないタイプではあると思うんです。ただちょっとずつちょっとずつ、周りの方々に影響されて考え方が柔軟になってきているのかなと思っていて。「伝える」ということの面白さや素敵さに気づけたのも、同じような流れかもしれません」
未知の領域を切り拓く、想像のパワー
―――そういう意味でいうと、バラエティのお仕事も相当大きなチャレンジだったのでは? どんな魅力を発見されていますか?
楽しんではいますが、やっぱり難しいですね。これまで経験してきたものとは全然違いますし、皆さん反射神経や頭の切り替えが本当にすごい。全然違う畑だし、どちらかといえば苦手だったのですが、苦手だからこそ参加してみたいな、と。先輩方もいらっしゃるので、安心して参加できるというのもあってトライしてみました(笑)。前よりはその緊張感が楽しさに変換できる部分が多くなってきたかなとは思うんですけど、難しいことにはまだまだ変わりないですね」
―――でも「難しい」と感じていること自体が、真剣に学んでいる証拠のように聞こえます。
そういった意味だと、ドラマや映画などと一緒で「もの作りなんだな」と認識できるようにはなりました。物事の背景に人が存在すると考えると、何事も少し身近に感じられるはず。なにかが目で見えないだけで、自分には分からないものとして蓋をしがちなので重要なことだと思っています」
過去、現在、未来をつなぐ無限の可能性
―――そうやってたくさんの気づきをへて、進化していく高杉さんの今後にワクワクしますね。「こうなりたい」と思う大人像などもあるのでしょうか?
それが、まだ全然想像つかないんですよね。僕の中でいろいろと大人を想像したときに、「こんな感じもあんな感じも、こういう風にもなりたい」といったように結構ごちゃごちゃしているんです。だからこそ選択肢は、無限大だなと思いながら。……え、かっこよく聞こえますか? でもなれるかどうか分からないですよ(笑)。ただ分からないからこそ、向かわなきゃいけないんだな、ってずっと感じています。時間はすごく限られているので、自分がなりたい大人像になれるのかは本当に準備期間次第だな、と思いつつ……生きてます(笑)」
―――前編ではイベントシーズンのインドアな過ごし方について伺いましたが、ホリディの楽しかった思い出などありますか?
「僕は福岡出身なのですが、子供のとき、毎年親族一同集まってクリスマスパーティーをしていたんですよ。祖父母や、母の4兄弟それぞれの子供たちなど結構な大人数の親戚が、うちの実家に来てくれて。ただ大きくなるにつれできなくなって、僕が東京に来る頃にはもうやっていなかったのかな。だから本当に幼いときの、それこそ小学生くらいの思い出なのですが、今でも理想の過ごし方だなと思っています。確かに珍しいし、ちょっと忘年会みたいですよね(笑)。でもとても楽しくて、子供ながらに今年も冬が来たな、と感じていた記憶は忘れられないんです」
優しさと深みをたたえつつ、凛とした心地よい声で贈りたいジュエリーを選んでくれた高杉さん。「日常で使ってもらえるものがいい」としつつも、高級感のあるデザインも気になった様子。 「少し照れくさいですが、とびきり華やかなものへの憧れもありますね。ホリディのギフトとして渡すなら、ゴージャスなデザインだと特に喜んでもらえそうです。モチーフとなっているバラは花のなかでも特別感があるので、大切なギフトにはぴったりなんじゃないかな」
一輪のバラをモチーフにした「クリスティーヌ」ネックレス。『オペラ座の怪人』のヒロインの名が由来になったというストーリーと、優雅なデザインが高杉さんの感性に触れたよう。立体的に広がる花びらと花びらの隙間から、素肌がのぞくデザインが繊細かつセンシュアル。
〈プロフィール〉
高杉真宙さん/俳優
1996年7月4日生まれ。福岡県出身。中学生だった2009年に俳優デビューを果たすと、特撮ドラマ『仮面ライダー鎧武/ガイム』(2013年)など話題作に多く出演。確かな演技力で国内外の映画祭での受賞歴を誇る。2022年には『ぐるぐるナインティナイン』内のコーナー「グルメチキンレース・ゴチになります!23」で新メンバーに選ばれ、バラエティ番組初レギュラー出演。また現在放映中の『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ)では、主人公の幼馴染で同じく医師という矢野悠太役を演じ、今後のストーリー展開に注目が集まっている。
【衣装協力】
オレンジコートのカット
ニット¥49,500、首に巻いたカーディガン¥49,500(UNDECORATED)/03-3794-4037
パンツ¥34,100(yoshiokubo)/03-3794-4037
STAFF
model: MAHIRO TAKASUGI
photo: TAKESHI TAKAGI at SIGNO
Jewelry photo: HIDETAKE NISHIHARA
styling: DAISUKE ARAKI
hair & makeup: SAYAKA TSUTSUMI
direction & text: MAKIKO OJI