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Toutoi Hibi
2023.07.12

Toutoi Hibi

私の夫は、
いわゆる「ミニマリスト」である。

初めて彼の家に行ったとき、
そのモノの少なさに驚いた。

キッチンも、
バスルームも、
クローゼットも。

収納率はどこも6〜7割。

モノが少なすぎて
落ち着かないわけでも
モノが多すぎて
鬱陶しいわけでもない、
本当に丁度いい、物量。

部屋の乱れは、心の乱れ。

どこもかしこも
気づけば
ぎゅーぎゅーに詰め込みがちで
定期的な“断捨離”が欠かせない
私にとって、
まさに理想的な空間だった。

彼の持ち物には全て
選ばれた“理由”があって、
“居場所”が決められていた。
どれもこれもが
あるべき場所に置かれていて、
彼に愛用されている
モノたちが
とても快適そうに見えた。

察しやすく感じやすい私が
初めて足を踏み入れた
その瞬間から、
すぐにリラックスできた家は
生まれて初めて、でもあった。

そして、
今思えば
とっても夫らしいなと思うのが、
部屋の半分以上を占めていたのが
ダブルベッドだったこと。

「部屋がどれだけ狭くなろうと
ベッドだけは
譲れなかったんだよ(笑)」

そう笑っていたけれど

「彼はきっと眠ることが
大好きなのだろうな...」

この部屋を見ればわかる。

「自分のことを
当たり前に
大切にできている人なんだな...」

そう、素直に感じた。

夫の部屋は
彼自身をそのまま表していて、
とても清潔で、シンプルだった。

初めて出会った日から
彼には
人が抱えがちな
“重たさ”が一切なかった。

「結婚の決め手は?」
と、よく聞かれるけれど

「今まで出会った人の中で
一番心が健康な人だったから」

と答えている。

そんな夫が
生まれて初めて身につけた
ジュエリーが、
なんと
結婚指輪だというから
さらに驚いた。

結婚指輪をし始めたことで
さらにそれに合わせて
ジュエリーが
増え続けている私とは正反対に、
夫の手元には、
もちろん結婚指輪だけ。

あちこちぶつけて
あっという間に
傷だらけになった私の指輪と
いまだ新品さながらに
つるん、きらんを
保っている彼の指輪。

夫婦って、面白い。

未来は、誰にもわからない。
たとえ
人生最愛の人とであっても、
何の約束もできない。

けれど、
だからこそ、

この軽やかで、穏やかな日々を
1日でも多く
丁寧に重ねていけるように、
心を尽くして生きていたい。

毎日、
左手の薬指を見るたび、そう思う。

_
text :
小寺智子
1983年生まれ、北海道出身。編集者。O型。
INSTAGRAM:@tomoko_kodera

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