vol.2
美しい女性が好きだ。
街行く人を眺めていても
ふと、
視線が引き寄せられるのは
昔から
美しい男性ではなく、女性。
振り返れば、
私の人生にはいつだって
私自身をいい人間、いい人生に
確かに導いてくれた
「ミューズ」の存在がある。
この連載では、
そんな、実在する
私の人生において不可欠な
「women」を
愛と感謝を込めて
ご紹介していきたいと思う。
・・・
2話目の女性。
高園あずささん。
元Ungridの
クリエイティブディレクターであり、
現在はフリーランスの
クリエイティブディレクターとして
衣食住の多岐に渡り、
さまざまなジャンルの
プロデュース業を手がけている。
プライベートでは
3姉妹のお母さん。
私が彼女と出会ったのは
約10年前、
私がファッション誌の編集者になって
まもない頃だった。
年齢で言うと、私の7つ歳下。
出会った頃、
彼女は24歳だった。
当時、
ファッションブランドの
ディレクターやプレスの方々の
私服コーディネート特集の担当となり、
フォトグラファーを引き連れて
プレスルームを訪れたのが初対面。
第一印象は
「超人見知りな超美人」
小声で挨拶されたきり、
終始俯きがちで、
撮影が終わるまで
一度も目が合わなかった記憶(笑)
それでも
印象的だったのは、
カメラを向けられた途端、
突然「オン」のスイッチが入る姿。
そして、
その凛とした眼差しの奥に感じた
人としての「純粋さ」だった。
瞬間的に
彼女のそのカリスマ性に魅せられた私は、
「彼女の本が作りたい」
と思い立ち、
すぐにスタイルブックの制作をオファー。
そして
2015年に『AZU』を発売した。
今も鮮明に覚えているのは、
『AZU』の校了間際に
彼女から連絡があり、
「このタイミングで
申し訳ないのですが、
巻末のインタビューページの
”恋愛”のところ、
リライトしてもいいですか?
実は元彼と復縁したんです」
と、相談された日のこと。
リライトされた原稿を見て、
私は正直、
心の中で「余計なお世話」をした。
(一生残る本に
復縁したばかりの恋人の話を
載せちゃっても大丈夫かな…?)
そんな私の想いは杞憂に終わり、
彼らがきちんと
「結婚を見据えた復縁」をしたことは
後々になって
知ることになるのだけれど、
その言葉通り、2016年に結婚。
今や3姉妹のパパとママである
満生夫妻は、
私の憧れの2人でもある。
夫婦であり、
親友であり、
恋人であり、
最強のチーム。
2人の関係性を見ていると
「結婚っていいな」と素直に思えた。
いつだったか
私がふと、彼女に尋ねたことがある。
「いい男を
見極めるポイントってなんだろね」
「小寺さん、
男性は絶対に“優しい人”が一番だよ。
表面的で、限定的な優しさじゃなくて
人間として、心根から優しい人。
そういう人を見つけたら、
絶対に捕まえて!」
「優しい人、って一番曖昧で難しいね…」
それでも彼女のその言葉は
私の頭の片隅にずっとあって、
その後も恋の予感が訪れるたびに
(この人は心根から優しい人か…?
高園、どう思う…?)
と、心の中で
彼女に話しかけては
試行錯誤していた日々が懐かしい。
そんなこんなで
何度か
「心根から優しい人」の見極めに
失敗した私だったけれど(笑)、
夫に出会えたときに
「こういう人のことか…!」と、
自然と思えたことを覚えている。
初めて感じる
彼の人としての優しさに
深い安堵があったのだ。
・・・
昔の恋人と別れたとき、
三日三晩
考えて、考えて、考えても
一向に腑に落ちなくて、
助けてほしくて
朝早く、突発的に
彼女に電話したことがある。
「どした?」と
心配してくれている
彼女のいつもの声を聞いた途端、
別れて以来初めて、涙が出た。
感情が溢れ返って
どんどん涙が止まらなくなり、
電話口で、
文字通りわんわん泣き続ける私を
静かに見守ってくれた
彼女の優しさを、
私はこれからも忘れないと思う。
昨年末、
突然の結婚の報告をしたときに
「高園が教えてくれた
人として、心根の優しい人に
ようやく出会えたよ。ありがとう」
と言ったら、
「へ!?そんなこと言ったっけ!?(笑)」
と、心底不思議そうな顔をしていた。
そういうところも好きよ。
何が嬉しいって
これからは
家族ぐるみでも付き合えること。
いつもありがとね、相棒。
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text :
小寺智子
1983年生まれ、北海道出身。編集者。O型。
INSTAGRAM:@tomoko_kodera