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Woman vol.6
2024.03.29

vol.6

美しい女性が好きだ。

街行く人を眺めていても
ふと、
視線が引き寄せられるのは
昔から
美しい男性ではなく、女性。

振り返れば、
私の人生にはいつだって
私自身をいい人間、いい人生に
確かに導いてくれた
「ミューズ」の存在がある。

この連載では、
そんな、実在する
私の人生において不可欠な
「women」を
愛と感謝を込めて
ご紹介していきたいと思う。

・・・

6話目の女性。

スタイリストの小山田早織さん。

彼女は
「PLUS VENDOME」の
ブランドアドバイザーであり、
まだ一度しか
会ったことのなかった私に
「小寺さんの言葉が好きなので
連載をお願いしたいんです」
と、ご依頼くださった張本人である。

小山田さんとのはじめましては、
2021年の冬。

当時、プロデュースを担当していた
高園あずさ氏のYouTube撮影にて
ご自宅のクローゼットを
撮影させていただくために
お邪魔した日だった。
(つくづく、私の人生において
高園氏が繋げてくれる方々との縁は深い…!
改めてありがとう、高園〜♡)

小山田さんの著書である
『“着ない服”がゼロになる!
稼働率100%クローゼットの作り方』
を拝見しながら
スタイリストならではの
“収納テクニック”を
教えていただくつもりで
お伺いしたのだけれど、
いざ、小山田さんの
クローゼットを見て、驚いた。

「これで、1年分の洋服、全部です」

「えっ!?」

「これだけですか…?」

小山田さんのクローゼットには、
洋服が全然なかった。
いや、厳密には、
もちろんあるのだけれど、
そこは
選ばれし最愛服たちだけの
それはそれは美しき空間で、
まるでお店のディスプレイのよう。

ハンガーとハンガーが
重なり合って、ひしめき合って、
どこにどの洋服があるかなんて
引っ張り出さないとわからない、
それが、
小さな家に住む
“一般人のクローゼット”だと
信じて疑っていなかった私は、
その光景を見て、
目からウロコが落ちた。

何事も“多く持ち過ぎる”ことで、
私たちは
文字通り容量が溢れ返り、溺れる。
そして
本当に大切なもの、を
見極められなくなる。

正確な“物量”を把握することで
頭も、心も、空間もすっきりする。

かつては
スタイリストとして
自宅以外に部屋を持つほどの
衣装持ちだった小山田さん。
そんな彼女が辿り着いた、
「必要なものだけで暮らす」
ことの本当の価値。

私は、
その“在り方”に心底、胸打たれた。

あの日、
私たちが教わったのは
収納テクニックなどではなく
小山田さんの繊細な精神性であり、
彼女自身の真ん中を貫く「美学」だ。

私がどれほど影響を受けたかは、
撮影の帰り道に
その日の夜の予定をキャンセルして
家に急いで直帰し、
真夜中まで
クローゼットの洋服たちを
処分しまくったことを見れば明らかだ。

私が求めているのは
物質的な豊かさではなく、
精神的な豊かさ。

きっと、
とっくにわかっていたことを
初めて目の前で可視化されたことで
迷いがなくなった。

私も、心底、
必要な“人ともの”とだけ、暮らしたい。

私が本当の価値を理解した上で
持ち物、人間関係、感情。
物理的、精神的、
その両軸において意識的に
“断捨離”をするようになったのは、
間違いなく、
小山田さんに出会ってからだ。

・・・

先日、
初めてゆっくりと
小山田さんと2人で
食事させていただく機会があった。

「小寺さんに
初めてお会いしたときって、
小寺さん、何か重たいものを
抱えているのだろうなぁ…って
思っていたんですよね」

「はい、
まさにちょうど、そんな時期でした」

あの頃の私は、
39歳目前で恋人もおらず
少しの時間的余裕と経済的余裕が
生まれた時期だったのだけれど、
仕事に忙殺され、
ジリ貧で暮らしていた頃に比べて
“幸福度”が上がったかといえば
そんなことは全くなくて、
「一人称の幸せには限界があるな…」
と悟り、
自分自身の今後の人生に
真剣に対峙していた時期だった。

そんなときに
小山田さんに出会えたことは、
本当に意味があった。

ちなみに
今の私のクローゼットの物量は、
当時の4分の1程度。

ワードローブの8割は
黒なのだけれど、
洋服も
ほとんど買わなくなった。

今の私は、
今までの人生で一番、私らしい。

それは、
大袈裟ではなく、
自分の手で
自分の人生を直接、掴めている感覚。

彼女に出会えていなかったら、
私がこうして
自分の言葉を残しておける場所を
いただけることもなかった。

小山田早織さん。

私の人生の転機となる
大切な“気づき”をくれた女性。

_
text :
小寺智子
1983年生まれ、北海道出身。編集者。O型。
INSTAGRAM:@tomoko_kodera

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