vol.9
美しい女性が好きだ。
街行く人を眺めていても
ふと、
視線が引き寄せられるのは
昔から
美しい男性ではなく、女性。
振り返れば、
私の人生にはいつだって
私自身をいい人間、いい人生に
確かに導いてくれた
「ミューズ」の存在がある。
この連載では、
そんな、実在する
私の人生において不可欠な
「women」を
愛と感謝を込めて
ご紹介していきたいと思う。
・・・
9話目の女性は、
イラストレーターの山口奈津さん。
私のニックネームといえば、
昔から
「こで」「こでちゃん」「ともちゃん」
あたりが定番なのだけれど、
彼女はどういうわけか
私のことを
「こでさん」と呼ぶ唯一の女友達である。
なんとなく、
風変わりな人物感、が出ていて嫌いじゃない。
そして初めて出会った日に
私の骨格を褒めてくれたのも彼女だ。
「うわぁ、完璧な鼻っ!」
人物を描くイラストレーターさんは、
どうやら骨格フェチが多いらしい。
確か、
人中の長さも最高、と言われた気がする。
「こでさんは骨が完璧やから
削ったらあかんよ。
特に顔のエラは絶対あかんからね!」
と、いつも真剣に助言してくる。
削る予定は
もともとなかったのだけれど、
おナツが言うのなら
今後も削らないでおこう、と思う。
なんというか、そういう存在。
出会ったのは、もう何年前だろう。
親友がプレスをしている
アパレルブランドの
POPUPストアの
ウォールペインティングを務めたのが
“おナツ”だった。
親友から
「ともちゃん、きっと好きだと思うよ」
と紹介され、たちまち仲良くなった。
その後も
プライベートではもちろん、
私が編集した書籍の
表紙や挿絵を描いてもらうなど、
いくつか一緒に仕事もした。
毎日のように連絡するわけでも
頻繁に会うわけでもないけれど
常に心にインストールしてある存在で、
結婚式で中座するときには
エスコートをお願いしたくらい、
私にとって彼女は、
これまでもこれからも
人生において絶対に欠かせない存在だ。
おナツは
とんでもない才能の持ち主で、
同時に
とてつもない美人なのだけれど、
どういうわけか
私が知る人の中で
最も謙虚で、オタクで、リアリスト。
彼女の豊富な語彙力で
世の中を爽快に斬る
チャーミングな毒っ気を
私は何よりも愛していて、
「何があったのか」
「どう感じているのか」
「これからどうしたいのか」
何か壁にぶち当たるたびに
彼女の“言葉”を欲している私がいる。
彼女の
ニュートラルで、けれど力強い
言葉の羅列を見たくて、聴きたくて。
「こでさんはこでさんのままでいいんだよ?」
おナツのその言葉に
何度、自分自身を奮い立たせ直してきたか、
わからない。
私の人生で起きたあらゆる“事件”を
彼女はおそらく全て、把握している。
おナツに出会ってからの私は、
ロマンチストで危なっかしい人間から、
ちょうどいいバランスで
冷静と情熱の間を往く者、になった。
自分を
卑下しすぎることも
横柄になりすぎることもなく、
けれど
何よりも自分自身を大切にしながら
淡々と、粛々と、
「在りたい私」を掲げ、
そのために黙々と、努力する。
それが、できるようになった。
彼女が私に与えてくれた
絶対的自信がその“土台”にあるからこそ。
・・・
そういえば
おナツといえば、数少ない「手帳仲間」。
お互いにスケジュールを
アナログな手帳で管理しているから、
会う日程の調整をしていると
「今、手元に手帳がないから
家に帰ったら確認してまた連絡するー!」
というメッセージが頻繁に飛んでくる。
おナツは私と違って
大抵、手帳を持たずに外出する。
そんなところも好き。
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text :
小寺智子
1983年生まれ、北海道出身。編集者。O型。
INSTAGRAM:@tomoko_kodera