トレンドの最先端にいて、華やかな印象のあるスタイリストという職業。数多くのファッション誌や広告を手掛け、
ご自身の名前がたつ企画も多い、亀恭子さん。多忙ながらも、常に笑顔で柔らかな空気を放つ亀さんに、
仕事への向き合い方、ライフスタイルなどを伺いました。
“覚悟を決めて始めた仕事に、前向き以外の選択肢はなかったです”
― まずは、スタイリストになったきっかけを教えて下さい。
新卒でOLになって、3年目。新しいことをしたいなと思っていた時に、アンケート取材で協力していた編集部から「スタイリストをやってみませんか?」という突然のオファーがきたんです。「亀さんは、読者と同じ大学生やOLを経験している分、それが戦力になると思う」と依頼してくれた師匠の言葉を信じて、やってみることに。思い切った決断ですよね(笑) 不安しかありませんでしたが、師匠を含む周りのスタッフが自信つけさせてくれたのだと思います。
ーシンデレラストーリーみたいですね! 常に第一線で活躍し続けていますが、挫折などはあったのでしょうか?
挫折、もちろんありますよ。スタイリストは通常、師匠について2~3年はアシスタントをするのですが、私はアシスタント経験がなくデビューをしてしまったので・・・ラッキーなようで、仕事の基本的なやり方がわからなくて。初めての仕事はスムーズにいっても、2~3回目から様子がおかしくなって(笑) 何もできないことに気がつきました。それが1回目の挫折です。仕事を必死に習得し更に3~4年を経た頃、師匠から〝親離れ〟した時、仕事が激減してしまいました。これが2度目の挫折です。今考えれば、あの挫折がなければ、スタイリストを続けていなかったかもしれません。それまでは師匠にウケるスタイリングばかり考えて仕事をしていたので、「私らしいスタイリング」とは?と自分と向き合いました。辛かったけれど、仕事の幅を広げるチャンスととらえて乗り越えました。覚悟を決めて始めたこの仕事に、前向き以外の選択肢はなかったです。
ー 亀さんらしいスタイリングって何だと思いますか?
私、ミーハーで、好きなテイストも移り気が激しいタイプなんです。だから、好きなテイストがいくつもあって。それをミックスさせて、どこかに必ず女らしさを取り入れるのが私らしさだと思っています。
ー 長く仕事を続けていく上で仕事のモチベーションを保つ方法はありますか?
“フットワークを軽く”を常に心がけています。友達とのキャッチアップや会食の席、誘われたら積極的に参加することも大事。そこで新しい出会いがあって、新しい仕事に繋がっていくことも。そうやって世界を広げていけば、新たな刺激になって、モチベーションを保っていけると思います。人との出会いを増やすことが、私のマンネリ打破方法ですね。
ー 仕事をしていく上で大切にしていることを教えて下さい。
まず、スケジュールが合わない限りは、仕事を断らないこと。20代は断っている場合ではないですし、30代からは、今の自分に必要だから、自分にできるから、仕事のオファーがきていると思うようにしています。人との接し方も大事ですよね。現場では全員が、私と仕事をする人。アシスタント、大御所、立ち位置関係なくボーダレスに対応することを意識しています。私が、駆け出しの頃、悲しい思いをしたことがあったので、同じことはしないようにしています。
“座右の銘は「人生おかわりなし」”
ー 今まで仕事の上で1番大変だったこと、また嬉しかったことはなんでしょうか?
20代後半の頃、多忙すぎて1週間で3~4時間しか寝られない時期もありました。そんな時、婦人科系で体調を崩してしまって。自分の体力を過信して無茶なことをしていた結果。自分の限界と向き合い、見直し、自分に優しくするきっかけにもなりました。嬉しかったことは、自分の書籍を出版できたことでしょうか。 当時は、モデルやタレント以外では珍しいことでしたし、自分のしてきた仕事が認められたようで嬉しかったですね。周りの反応も幸せでした。
ー 仕事をしていく上で、努力をしていることはありますか?
モードの情報を収集するだけでなく、街中の人々のファッションを観察するようにしています。それと、欲しいお洋服はプレスを通して買うこともできるのですが、なるべく実店舗へ行って買うようにしています。おしゃれな店員さんやお客さんのコーディネートがインスピレーションになることが多いし、お店で新しい何かを発見することも、すごく多いんです。だから、色々なブランドを1度に見ることができるセレクトショップが好き。H BEAUTY&YOUTHや、Stunning Lure、伊勢丹新宿店がここ最近のスタメンです。自分への投資を惜しまず、ファッションは毎年、更新していくようにしています。
ー 働く女性、母、妻、さまざまな顔をお持ちですが、どのようなバランスで何を大事にされていますか?
結婚する前と後、子供を産む前と後で、変わっていないと思うようにしています。何かを犠牲にする生き方は誰にとっても幸せじゃないと思うから。ポジティブに、頼れる人には頼って、みんなそれぞれの事情があると思うので、できる限り仕事相手のリズムに合わせます。私にとって頼れる人は、義母。ありがたいことに、子供も義母と会うのが嬉しいし結果2人とも喜んでくれるので。日中と平日は一緒にいられない分、夜ご飯はなるべく一緒に、週末は家族の時間、と決めています。子供が生まれて、ぼんやりする時間はなくなりましたが、その分集中して時間を有効に使うことができるので、むしろ効率化できている気がします。仕事、家庭・・・何かに偏ることなく時間を割り振るようにしていますね。
ー 憧れの女性像とは?
自分の立場を器用に楽しんでいて、常に笑顔でいられる人。結局は笑っていられる環境が、1番幸せですよね。祖母がいつも言っていたんです「笑っていると健康になるのよ」って!
ー 息つく暇もないほど忙しい中でのリフレッシュ法や、いつも笑顔でいられる理由を教えて下さい。
リフレッシュ法は、旅行です。子供が小さいのでハワイが多いのですが、去年は南仏まで足を延ばしました。年に3~4回は、時間を調整して行けるようにしています。日常とは違う環境に身を置くことで刺激にもなるし、家事に追われないからリフレッシュにもなります。そうすれば、自然と笑顔でいられますね。
ー 座右の銘を教えて下さい。
「人生おかわりなし」人生1度きり。後悔せずに、楽しんだもの勝ちです。
ー 雑誌で拝見することも多いのですが、美容のためにしていることはありますか?
服をかっこよく着るために、お風呂でできるストレッチや、肩甲骨周りのストレッチは習慣にしています。もっと行った方がいいと思いつつ、整体も3か月に1回ぐらいしか行けなくて。現場での情報収集も大事。気になることがあったら、フットワーク軽く、すぐに試すようにしています。また、睡眠は極上の美容液だと思うので、質のいい睡眠をとれる環境を整えています。ムアツ スリープスパのマット、枕はおすすめです。
ー お休みの日の過ごし方を教えて下さい。
家族のために出かけます。最近はアウトドアにはまっているので、キャンプやスキー、乗馬などアクティブに遊びに行きます。非日常的なので、リフレッシュもできますよ。
ライフスタイルにも合っていて、トレンドでもあるので、普段のコーディネートは、フラットシューズがメイン。中でもビジューがついていたり、柄物のフラットシューズなどインパクトデザインのものは、一見着回しが効かなそうに見えて、コーディネートのアクセントになるので、使えるアイテム。シンプルなコーディネートが多い人ほどおすすめです。どうしても生活感がでやすいアイテムですが、インパクトデザインなら、きれいめスタイルにもはまります。
AROMATIQUE CASUCAのインナー。ノンワイヤーでも、バストをしっかりホールドしてくれるので、楽ちんですがシルエットは◎。カットソー素材やバックが空いた服を着ることが多くなるこれからの季節、インナーに悩みがちですが、これはスポーティなのであえて透かして着てもスタイリッシュで、出番が多くなりそうです。
ー 印象に残っているジュエリーにまつわる思い出はありますか?
スタイリストになって5年目の27歳の時に時計を購入したのですが、10年目、15年目と節目のタイミングには自分へのご褒美にジュエリーを購入しています。一粒ダイヤのネックレスやパールなど、おばあちゃんになっても愛用できる、普遍的なものを買うようにしていて。次の節目にはジュエリー感覚でつけられる華奢な時計を考えています。
ー ヴァンドーム青山というブランドには、どんなイメージをお持ちでしょうか?
ヴァンドーム青山のジュエリーは、永遠のベーシックだと思います。普遍的で長く愛用できる、パールやダイヤモンド、質のいいものがそろっているから、お店に行くと、必ず欲しいものが見つかります。
ー 最後に、ファッションやジュエリーは、亀さんにとってどんな存在ですか?
自己表現のツールの1つです。第一印象を決めるものだと思うから。ただ、自分の着たい服を着るのではなく、TPOに合わせて、会う人によって、変えるようにしています。目上の人とならジャケットできちんと、女性同士ならトレンドを意識したり。私自身を知ってもらう上で、大事な存在です。ジュエリーは、コーデのスパイスに必要不可欠なもの。同じニットでも合わせるジュエリーによって、印象が変わりますよね? さりげなくつけておこう、というよりは、意図的に選んでますね。ジュエリーや小物をつけてスタイルが完成するイメージです。
カジュアルなデニムコーディネートに、年相応の品と女らしさを添えてくれるパールのジュエリー。ネックレスは小粒のものを選べば、テイストの違うTシャツに合わせてもなじみます。リングは、デザイン性のあるものを選んで、
手元のアクセントにします。
ネックレスは、希少性の高い、極小のアコヤパールを使用。パールですが、粒が小さいのでカジュアルにも使えます。デザインリングは、服によって、パールの位置を変えて楽しむことができるのが魅力。ピアス、ネックレス、リングとすべてパールだと盛りすぎでこってりするので2アイテムに抑えてバランスを。
コーディネートを爽やかに仕上げたい時に活躍してくれる
ホワイトジュエリーがマイブーム。
フェミニンなレースのオールインワンにレザーと
スニーカーでハズしを効かせた存在感のあるスタイルには、
ストーンは控えめに、シンプルな印象のアイテムを合わせて。
デザインで程よくモードをプラスすれば
おしゃれ感度も高まります。
ネックレスのダイヤモンドは、スクエアのダイヤモンドを4つ組み合わせて1つの石に見せているので立体感が増し、ボリュームがありながらもリーズナブルなプライス。ホワイトゴールドのピアス、リングは、華奢なものよりもメンズライクの大ぶりデザインがトレンドです。
最近気になっているベージュメインのコーディネート。
ベージュ×ブルーの配色が好きなので、ターコイズの
ジュエリーをチョイス。淡いトーンのコーデがブルーのアクセントで
引き立ちます。エスニックなテイストのジュエリーは、
コットンやリネンなど、ドライな質感のトップスと好相性です。
ネックレス、リングはダブレットという技術で、ターコイズの上に、クオーツを重ねて張り合わせたデザイン。マットなターコイズの質感に、抜け感と透明感がでるのが特徴です。バングルとリング、大ぶりなものは、違う手につけるとバランスがよく見えます。
新卒で航空関連会社に勤務した後、スタイリストに。トレンドと女らしさが絶妙にミックスされたコーディネートは、OL経験のある強みを生かしたリアリティもあると定評が。SNSなどで発信されるご自身のファッションやライフスタイルは常に注目の的。プライベートでは3歳男児のママ。
STAFF
Guest & Styling: Kyoko Kame
Photo/model: Keiichi Suto
Photo/still: Hidetake Nishihara(TENT)
Hair & Make-up: Taisei Kuwano(ilumini)
Text: Ayako Ajisawa
Edit: Madoka Takano(FMJ STUDIO)
Web Design & Development: Jomon (FMJ STUDIO)
Creative Direction: Yuki Sugawara (FMJ STUDIO)