2024年の大河ドラマ『光る君へ』(NHK)で一条天皇役を演じるカメレオン俳優、塩野瑛久さん。作品に関するインタビューが始まると、撮影時のミステリアスで大胆な表情から一変し、ぐっと実直な眼差しに。それは見とれてしまうほどの美貌の裏から、地に足がついた誠実な品性がのぞいた瞬間だった。後編ではいよいよ、注目の大河ドラマに対する熱き想いを掘り下げます!
愛ある現場に、身を置くことの意味
――紫式部を吉高由里子さんが演じる大河ドラマ『光る君へ』で、一条天皇役を演じますね。まず、大河ドラマにはどのような想いを持っていたのですか?
「もともと『いつか絶対出たい』と思っていました! でもなかなかオーディションに受からないので、正直ちょっと諦めていたときもあったり。だからこそ改めて、今自分がいる環境のすべてが有難いです。例えば撮影初日に、俳優の井浦新さん〈藤原道隆役〉が『前に天皇役をした経験があるから』と僕のところまで来てアドバイスをして下さったんです。僕だったらアドバイスに行くなんて躊躇しちゃうことを、ごく自然にやって頂いた。きっと日本を代表する役者さんやスタッフさんが集まって、皆さんが『いい作品を作りたい』と愛を持っているからこそ、そういったアドバイスが自然にでてくるんですよね。そんな場に身を置けること自体が、僕には大きな意味を持っているんです」
――演じる一条天皇は、国を治めつつ文化にも造詣があり、かつ当時の帝の身分ではかなり珍しく純愛を貫いた方。公式コメントで塩野さんが、「真面目で思慮深く、それでいて愛情深い」と表現されていたのがとっても印象的でした。
「一条天皇のことを調べれば調べるほど、なんて素敵な役を頂いたんだろうと自覚していきました。一番に考えたのは、高畑充希さん演じる定子〈注:藤原定子(さだこ)。清少納言などが集うサロンを作り、一条天皇の最愛の妃となる〉との向き合い方。高畑さんとはずっと昔に共演をしていましたが、当時は顔を合わせるシーンも少なかったんです。その後も魅力的な俳優さんとして作品を追っていたのですが、今回顔合わせした時に僕のことを覚えてくださっていて。その時の雰囲気で、自然と安心できました。『一条天皇に気持ちを寄せて、この人を愛し抜ける』ときちんと思えたのが心から嬉しかったですね」
1000年前の君へ、想いを馳せて
――平安後期を生きた一条天皇と、共通点があるとしたら何でしょうか? 政治が恋にも影響し、思惑をもつ人々の間で苦労された帝のようですが……。
「今と平安時代は風習や様々なことが違うけれど、根っこの部分は変わらないのではと思っています。一条天皇と僕は、どちらかと言うと……いや多分すごく、近いかな。自分で言うのもなんですが、たまに『俺つまんない奴だな』って思うほど真面目になっちゃう部分とか(笑)。でも遊び心も大切にしたいし、一条天皇が子供の頃から引き継いでいる無邪気さなんかも共感します。プロデューサーやスタッフの方が、オーディションでの僕の自然体で素直な感じがよかったと言って下さったので、恐らく合っているはず(笑)。 あと一条天皇は、色々なことに関して板挟みになる瞬間があると思うんです。僕もスケールは違うけれど、本当にそういうポジションなんですよ(笑)。家族で喧嘩しても、末っ子の僕が仲裁する立場になったり……。一条天皇と一緒に飲みに行ったら? もうマブダチなんじゃないかってほど仲良くなるでしょうね。『それ分かる分かる』とか言いながら、2人で盛り上がれるんじゃないかな。1000年前を生きていた方なのに、意外と身近に感じている自分がいます」
丁寧に描かれる、様々な愛と人間模様
――それでは作品全体の見どころを、塩野さんならどう表現しますか?
「一番に思うのは、すごく愛らしい雰囲気が流れている作品。家族愛や大切な誰かに寄せる愛、また尊敬の気持ちだったり、色々な方向の愛が描かれている。その一つ一つ、一人一人に人間模様があって、そこが多く描かれると思うので、平安時代に馴染みがない方でもまずその世界観を楽しんで頂けたらと思います。逆に平安時代に詳しい方は、解釈の仕方を楽しめるのでは。今回の脚本を手掛ける大石静さんが仰っていたのですが、この時代は多くの文献が残っているわけではない。だからこそ演者も含めて、なにがどう起こっていたのかを繊細に考えていける。自分たちなりに思うことやオリジナリティを込めながら、見せていける作品でもあると思っています」
――今回は文学の才能で、自らの人生、ひいては時代を創っていった女性である紫式部が主人公。歴代の大河ドラマのなかでも、また違ったヒロイン像ですよね。
「この時代に才能で名を残していること自体が、ものすごいことですよね。大石さんの脚本のおかげかもしれないけれど、僕の中で、紫式部はとてもイキイキしている女性。関係する男性の立場で女性の優劣がつけられてしまう時代に、文才を磨き皆に読んでもらうまで辿り着いたことが、彼女にとって大きな一歩だったのでは。その一歩がなければ、現在まで名前が語り継がれることもなかったと思うので。ドラマでは本当に一人の人間として、魅力的な女性がたくさん出てきます! 僕が演じる一条天皇も同じ。大河ドラマだからとか、天皇だからとかを意識しすぎるよりも、一人の人間としての彼にずっと向き合ってしていけたら嬉しいですね」
選ぶのは、華と色気を運ぶジュエリー
――肌に触れる時間が長いジュエリーは、お守り代わりに着ける方も多いです。多くのチャレンジを経験中の塩野さんが、身に着けてみたいジュエリーはありますか?
「今日『バングルがジュエラーにとってシグニチャー的な存在』だと聞いて、とても魅力的だなと思いました。それまではピアスかネックレスと考えていたのですが、僕は時計もあまり着けないのでバングルは確かにいいなと。ジュエリーに馴染みがない男性が着けていても違和感がないし、ちらっと袖から見えたときに色気が出て、華やかさが違うと思う。撮影で手が綺麗と褒めてもらえたので(笑)、是非バングルに挑戦してみたいです!」
His select
日常になじむ、華奢な輝きを贈りたい
大切な人へホリデーにジュエリーを贈るとしたら?という質問に、真剣に悩んだあと「普段使ってもらえるもの」とのお答えが。レイヤードにもぴったりな、繊細なラインを描くアイテムが気になっているよう。「日常でも身に着けてもらうとなると、負担にならず主張しすぎないものがいいですよね……。ぱっと浮かぶのは、華奢なイメージのジュエリー。贈る相手がお洒落だったらジュエリー選びも緊張しちゃうだろうし(笑)、いつものファッションにも合わせやすい小ぶりのものを、たくさん使ってもらいたいです」
美しく輝く地金に、様々なモチーフやシェイプが彩りを添えて。取り入れやすいからこそ、少し気分を変えるチョイスを楽しむことも可能! 例えばクール派には可憐なフラワーモチーフ、またはフェミニン派にマチュアな直線が輝くブレスレットなど、重ね付けしやすいジュエリーが新たな一面を引き出してくれる。
塩野瑛久さん/俳優
1995年1月3日生まれ。東京生まれ、神奈川県育ち。劇団EXILEのメンバー。2013年『獣電戦隊キョウリュウジャー』でのレギュラー出演を皮切りに、数多くのTVドラマ、映画や舞台に出演。ダイナミックなアクションでも注目を集める一方、幅広い演技にも定評があり、現在放映中の『ブラックファミリア〜新堂家の復讐〜』(読売テレビ・日本テレビ)と『天狗の台所』(BS-TBS・BS-TBS 4K)では、それぞれ全く異なる役柄を演じている。2024年1月7日より放送開始される大河ドラマ『光る君へ』(NHK)に一条天皇役で出演。
【衣装協力】
〈ダウンジャケット〉
ダウンジャケット¥133,100 スニーカー¥123,750/ともにY-3(03-5547-6501)
オレンジトップス パンツ/ともにスタイリスト私物
〈セットアップ〉
ジャケット トラウザー シューズ/すべてスタイリスト私物
STAFF
model: AKIHISA SHIONO
photo: TAKESHI TAKAGI at SIGNO
styling: TAKASHI YAMAMOTO
hair & makeup: KATSUYOSHI KOJIMA at Tron
Jewelry photo: HIDETAKE NISHIHARA
direction & text: MAKIKO OJI