"Me & Cats"
ドネーション企画の立ち上げにあたり
ヴイエー ヴァンドーム青山のデザイナーが
アニマル・ドネーションの認定団体である
「ねりまねこ」亀山様に
インタヴューをさせていただきました。
――今回のドネーション企画 "Me & Cats" を通じて、地域に住む猫や保護猫たちについて知ってもらうきっかけになればと考えています。
一般企業の方からそういった話をもらえるのは嬉しいことです。私たちも活動を始めて11年目ですが、当初、野良猫の活動はマイナーでした。
社会的に認められるようになったのはごく最近のことなんです。テレビなどで知名度の高い方が情報発信してくださっていることも大きいですが、取り上げてもらえる機会が増えたのは素晴らしいことです。日本の動物愛護の意識も上がってきました。良いほうに変わってきたという感じがあります。
――実際に活動環境はこの数年で変わりましたか。
変わりましたね。公益社団法人 アニマル・ドネーション(以下アニドネ)さんとご一緒させていただくことになってそれはより顕著です。
・・・というのもアニドネさんの審査はとても厳しく、日本の愛護団体の中で本当に限られたところしか認定されていません。アニドネさんからの寄付は本当に助かります。
――当初はボランティアだったんでしょうか。
そうです。11年前に自宅の庭に来た猫が子猫を生んでしまったんです。
これは放っておいたらまずいなと思って不妊去勢手術をしようと思ったんです。練馬区が野良猫対策の助成金を出してくれるのですが、そのためにはボランティア登録というものをきちんとしないといけないんですね。それをきっかけに夫と一緒にボランティア登録をしました。
――どういった活動をされているのでしょうか。
「練馬区地域猫推進ボランティア」というもので、保健所の講習を受けて区のガイドラインに沿った活動をしています。
活動地域も定められていて、登録地域内での活動をしています。練馬区のガイドラインでは実は、猫の引き取り、保護は活動に含まれていないんです。
なぜかといいますとひとたびボランティアが猫を引き取ってしまうと町の人たちは外の猫を適正に管理する地域猫活動をせず、ボランティアに押し付けるだけになってしまうからです。「町で生まれた猫たちは町の中で適正に管理しましょう」というのが私たちが進めている地域猫活動なんです。
地域社会の中で問題解決能力を上げていくこと、私だけが頑張るのではなく、町の人たちを巻きこんでこれをやっていく、それが私に与えられた使命なんです。私は東京都知事の委嘱をうけまして、東京都の動物愛護推進員もやっています。
――ボランティアを始めた当初の町の方の反応はどうでしたか。
保健所の職員と一緒に町会長へ説明に行ったときの話です。
今までは野良猫の糞尿がくさい、餌やりのマナーが悪いという苦情しかなく何とかしようという方がいなかったのですが、当時の町会長さんに私たちの活動の話をしたところ、皆が困っている問題を解決しようとしていてとてもいいことですね、と仰って下さいました。
そこで町内会の方たちにも地域猫の活動について説明に伺ったのですが、野良猫について話し合うと文句ばかりが出てしまったのです。その時に賛否を取っていたら’野良猫は嫌い’という結論になってしまったと思いますが、町会長さんは賛否を取らず、練馬区の推進していることですから、町会としては協力することが当然です、と仰って下さいました。
それがとても嬉しくて、まだ制度が始まったばかりの頃で私も不安だったのですが、町の人が協力してくれるならしっかりやろうと思いました。
――活動するにあたり、重要な点はどういったことでしょうか。
ボランティアをする際には、地域の方へきちんと広報をしなければならないと言われています。
私は講習も受けて、TNR(Trap捕獲 Neuter不妊・去勢手術 Return元の場所に戻す)のやり方を町の方々に教えています。そうしたら賛同してくれて、町の方たちが自ら動いて野良猫を捕獲したり、動物病院に連れて行ってくれたりしたんです。
中には不妊去勢の手術費を全額ご寄付頂いたこともあります。それは本当にびっくりしましたね。世の中の善意がこんなに素晴らしく回っていて、自分が与えた情け以上にたくさんのギフトをもらえたことに感動しました。
以前、外資系の企業に勤めていた時に人事総務部門にいましたが、いろいろな地域貢献活動をしていました。社会のために貢献するということは誰かに与えるだけでなく必ずみんなから感謝されたりいろいろな偏見とかが変わっていったりして、たくさんの気づきがありました。
――偏見を変えるためにどういったことをしましたか。
まずは自分で勉強してみること、そうすると自分が変わっていきます。
自分が変わってくるとそれをきちんと周りの人にも説明できるようになってみんなの偏見が変わっていく、優しい気持ちに触れることができました。猫の問題でいえば、猫は野生動物でみんなの迷惑な存在で自分たちに関係ないもの、ではなく元をただせば人間から発したものなんです。人間の責任だったら、人間の力でできることをしてあげたらいいなと思ってそのことをとにかく発信しました。10年前、当時はブログ黎明期で、野良猫対策の情報を流し始めました。検索で引っ掛かりやすいよう、「ねりまねこ・地域猫」という名前でブログを発信していき、多い時では一日のアクセス数が5万を越えました。社会の中に猫のボランティア活動というものが少しずつ広がっていきました。
10年前は猫の譲渡会というのもほとんどありませんでしたが今は毎週どこかで行われています。10年前は猫に対して苦情しかなく、猫がいじめられて、猫をかわいそうに思う人もいじめられて私たちボランティアも併せて石を投げられるみたいな状況だったんですが、それが変わって来ています。
餌やりの方法であるとか、ルールにのっとって適正な管理をするということが当たり前になってきていることも大きいと思います。
―地域猫のルールはどのように設けているのでしょうか
まずは地域の問題として、地域の力で猫の問題を解決しましょうということです。不妊去勢手術を行い、ルールを守った餌やり、猫トイレを設置することなどです。
――餌やりのルールはどういう決まりがあるのでしょうか。
置きエサはしないようにしています。時間も場所も、量も決めて、決まった猫たちに決まった量を与えるというルールになっています。もちろん片付けや掃除も行います。
――保護される猫とTNRをする猫との差はどういったことでしょうか。
単純に体重が1キロあるかどうかです。1キロ未満だと不妊去勢手術はできません。
とは言え、私たちは2キロ未満の子猫はすべて保護しています。とにかく外にいる猫を減らすことが一番です。外にいると糞尿などのトラブルの火種になるばかりでなく、事故の被害にあってしまう可能性がありますから。
私たちはこれまで約2000匹捕獲して不妊去勢手術を行い、700匹くらいを保護譲渡、他は元いた場所に戻しています。
――亀山さんはご自宅で猫たちを保護されているのですね。
そうですね。もともとは保護活動をするつもりはなかったんです。
私たちはTNR活動のことを「蛇口を閉める」と表現していますが、とにかく生まれ続ける野良猫の数を減らす、そちらに力を使いたいと思っています。でも1キロ未満の子猫は保護しても手術ができないのでどうする、となるわけなんです。
保護活動をすると町の人たちの満足度は高くなります。みんな幸せな飼い猫になりましたというストーリーは猫が好きな人にとっても嫌いな人にとってもすごく嬉しいお話なんですね。
すべて保護できればいいのですが、人慣れしない猫を1匹保護してしまうともうそこで私の活動は詰んでしまうんです。持続可能な活動でなければ、多くの猫は救えません。不幸な猫を減らすためには、TNRと保護の両軸で活動することが今できる最善だと思います。
――成果は出てきていますか。
10年たってすごく成功していると思います。町のありようが全く変わりました。
――こういった活動はなかなかできることではないと思います。
私は平均的な猫好きより、ちょっと猫好きくらいですね。冷静に、最善の方法を模索するという考え方です。
ある意味、経営戦略と同じなんですが、戦略的に効果的にこの問題を解決するためにはどうすればよいかと考えたときに割とベターな方法をとっていると思っています。とにかく回転を速くして数をこなしたい。譲渡して、ここから卒業していけば次の子をお世話できますからね。
―譲渡会は定期的に行っているのでしょうか。
ほとんどはインターネットの里親サイト「ペットのおうち」で募集しています。
ネコを飼いたい方がいれば紹介しておりますので、ぜひどうぞ。
――この企画を始める際に弊社内でも趣旨を説明したのですが、結構興味を持ってくれる人もいました。
素晴らしいですね。この活動は実は人間を助ける活動なんです。ただの猫かわいがり活動ではなく、もっともっと深い話です。猫に迷惑している人であり、もしくは猫がかわいそうで心を痛めている人であり・・・そういう人たちを救う活動なので、最終的には人間のための活動なんです。結果として、その延長線上で猫たちが救われて、人も猫も幸せになっていくといいですね。
インタビュー感想
亀山様ありがとうございました!たくさんのエピソードを伺い、とても有意義な時間を過ごさせていただくことができました。亀山様の愛情深いお気持ちと冷静な判断に基づく真摯な姿勢に心打たれました。
「持続可能な活動でなければ、多くの猫を救うことはできない」「不幸な猫たちを減らしたい」実際に活動をされている方に直接お話を伺うことで、より現実の厳しさを感じました。
私自身も多頭飼育崩壊からレスキューされた2匹の猫の里親になっており、猫たちを取り巻く現実の厳しさを感じてはいたのですが、自分にできることが何かは分からずにいました。
私のような「何かをしたいけれど、どうすれば良いのか分からない」そういった方が世の中にはたくさんいらっしゃると思います。ひとりひとりが「できることは何か」を考え、小さくても行動を起こすことで社会がより良くなっていくきっかけになれたらと思います。
私はジュエリーデザイナーとしてかわいい猫のジュエリーを作ることでヴイエー ヴァンドーム青山のお客様に喜んでいただき、今回のドネーション企画 "Me & Cats" を通じて、猫たち、さらには寄付する側もHAPPYになってほしいと願っています。
ヴイエー ヴァンドーム青山のジュエリーを通じて、地域猫や保護猫について知るきっかけになれば嬉しく思います。